グローバル人財 Vol.3-コミュニケーション(1)-2011年5月9日

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中村 喜一郎
経営・人財コンサルタント

P&Gの研究開発本部で、日本、アジア、世界市場向けのヘアケア製品の開発、ベルギーに赴任し、ヨーロッパ、アジア、ラテンアメリカ向けの柔軟仕上げ剤の処方開発を牽引。 その後、人事統括本部に異動し、約500人、18の出身国からなる神戸テクニカルセンターの組織改革、人材育成を推進。 その他、社内の日本人で初めて父親による育児休業を取得し、その経験を朝日新聞で「育休父さんの成長日誌」として連載、出版(共著)。2008年、独立。 多様性を駆使した、世界に通用する製品・人財・組織開発のコンサルティングおよび講師・講演活動を、産学官民、日本語・英語、大・中小企業と幅広く行う。 大阪府立大学大学院工学研究科博士前期課程化学工学専攻修了(工学修士)



◇ グローバル・コミュニケーション
グローバル人財として、これまで述べてきた人の成長とそのサイクル化、そしてリーダーシップを発揮する上で、効果的なコミュニケーションは不可欠です。 コミュニケーションのもともとの意味は、意見や意思、情報の伝達ということで、日本においては「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」という素晴らしい慣習があります。

しかし、グローバルな舞台では、ホウレンソウを超えた、より多様性を考慮したコミュニケーションが必要になります。 私自身、グローバルプロジェクトやベルギー赴任という、文化や習慣、価値観、歴史観の違いというものが如実に現れる中、他者の意見に敬意と理解をもって接し、自分の意見を率直かつ説得力を持って述べることの大切さを、より強く感じました。 以下、特に印象に残っている経験や学びについてご紹介したいと思います。

黄金律と白金律
孔子の論語に、「己の欲せざる所、人に施すなかれ」という言葉があります。 英語では、「Treat others as you would like to be treated.」で、よく黄金律として引用されます。 ところが、この黄金律、実は自分目線で、「自分がされたらいやなことは人にしない」または「自分がしてほしいように相手にもしてあげよう」と、他人のことはなおざりになっているともいえます。 そこで、生まれたのが、「Treat others as they would like to be treated.」という白金律です。 独りよがりな思い込みを自戒し、相手目線に立って、その人のことをきちんと理解して接するのがとても大切だということです。 

さて、この白金律、確かに自分目線から相手目線へのシフトは素晴らしいですが、もし、相手がいわゆる依存状態にある場合はどうでしょう。 その人が欲するものをそのまま与えることが、本当によいことなのでしょうか。 

古の言葉に、「If you give a man a fish, you can feed him for a day. If you teach him how to fish, you can save him for a lifetime.(人に魚を与えれば1日食べさせることができる。 魚の釣り方を教えれば、一生助けることができる)」というものがあります。 魚がほしいという人に単に魚を与えるだけでなく、魚の釣り方を教えるというのは、「やり手から与え手」という、以前述べた相互協力の考えそのものです。 依存している人は、「私もだれかが魚をくれるのを待っているのです」というかもしれないし、自立で止まっている人は、魚を与えてそのまま立ち去ってしまうことでしょう。

このように、黄金律、白金律ともに完ぺきではなく、相互協力の精神を持って、相手によって使い分けたり、状況によって組み合わせたり、その時々に応じてバランス良く活用することが必要です。

共感的リスニング
白金律を駆使して自分目線と他人目線のすり合わせを図り、相手のことを理解するためには、しっかりと聞く必要があります。 しかし、本来、理解するために聞く、「Listen to understand」という行為が、ともすれば、聞いているそばから返事をしたくなる、「Listen to reply」になってしまいがちです。 特に経験を積み、仕事ができるようになればなるほど、人の話を途中で遮り、「自分語り」を始めてしまう。 

私自身、前職の360度フィードバックという制度の中で、上司とその上、部下とその下、さらにはななめ上、横、斜め下と文字通り全方位からフィードバックをもらった際、実に9割の人から、「人の話を聞かない」という指摘を受けたことがありました。 上司のサポートを得ながら、「まず黙る」、「聞く」、「聞いたことをオウム返しする」、「徐々に自分の言葉に言い換えたり、解釈を加える」、というプロセスを経ることによって双方向の理解と共感へと導く、共感的リスニングに取り組みました。 それ以来、私が座右の銘としているのが、「聴」という漢字です。 「耳、プラス(+)、目(横向き)、心」と洒落をきかせながら、耳と目と心を総動員して傾聴し、相手の理解に努めます。 娘が学校の授業でアクティブ・リスニングとして習ってきたものをアレンジしました。 コーチングやフィードバックセッション等で披露すると、洋の東西を問わず好評でした。

次回は、そのフィードバックのコツ、そして英語について述べたいと思います。
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Kiichiro Nakamura 無断複製・転載を禁ずる


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