ソニーのグローバル人材活用-Vol.1 2010年2月5日

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萩森 耕平
ソニー株式会社 グループ人事部門 国際人事部 海外赴任者人事グループ 兼 ソニーヒューマンキャピタル株式会社 IHRセンター 企画グループ マネージャー

日系大手電機メーカー、外資系コンサルティングファームを経て現職。人事として製造拠点、シェアードサービス部門、本社部門での勤務経験を持ち、コンサルタントとしてはグローバル化、社内コミュニケーション、ナレッジマネジメントなど、多様な領域のプロジェクトに従事してきた。専門領域は海外赴任者処遇、グローバル人材マネジメントなど。


古くて新しい問題「人材のグローバル化」
以前勤務していた会社で人材育成をテーマとしたプロジェクトに従事していた際、とても驚いたことがあった。私はそのとき人材のグローバル化に関する分科会のメンバーで、過去のグローバル化に対する取り組みについて古い資料をあさっていたのだが、資料室で偶然あるファイルを発見した。

そのファイルは、10年以上前に行われたプロジェクトに関するもので、グローバル化対応もそのテーマになっていた。当時の議論がきれいにファイルに整理されていたのだが、驚いたことに、議論されている内容は10年後のプロジェクトで私たちが取り上げていた課題と全くと言って良いほど似通ったものであった。その後に転職した会社で、私はコンサルタントとして様々な企業の変革をお手伝いしたが、そこでも何度か同じような経験をした。

「人材のグローバル化」というテーマについては、私が知るだけでも、ここ20年ほどの間に、日本企業で議論されてきた内容はほとんど変わっていないと感じる。「優秀な現地社員の活用」「日本本社のグローバル化」といったテーマがそれだ。残念ながら、人材の面でのグローバル化は、10年前、20年前に我々の先輩諸兄が考えていたほどには進展していないというのが、大方の日本企業の実感ではないだろうか。

なぜこれほどの長期間にわたって、非常に重要な問題であるというコンセンサスを多くの人が共有しているにもかかわらず、「人材のグローバル化」に関する問題は遅々として進んでいないのか。本コラムでは、私のこれまでの経験や、ソニーの現在の取り組みを元に、考えてみたいと思う。

世界でビジネスがホットなのはどこか?
人材の話に入る前に、グローバルなエレクトロニクスビジネスの状況について概観しておこう。
ビジネスがホットなのはどこか?この問いに対する答えは明らかで、BRICsやその後に続くと言われている新興国である。ソニーにおいても、売り上げの源泉が欧米から新興国にシフトしはじめている。
参考:http://www.sony.co.jp/SonyInfo/IR/financial/ar/8ido180000023h5d-att/arj09_08.pdf
(過去3年の地域セグメント別売上高及び営業収入)

一つ一つの新興国の市場規模がまだそれほど大きくないことを考えれば、これはマーケットの多様化・複雑化が進んでいることを意味していると言って良いだろう。極端な言い方をすれば、従来は日本・アメリカ・西欧を中心にやっていればよかったビジネスが、そうは行かなくなってきているのである。

多様化・複雑化した世界、しかも急速に変化していくマーケットにおいて重要なのは、そうした動きに対応できる柔軟性とスピードである。ソニーはこれまでグローバルビジネスの現地化を推し進め、地域にあったオペレーションを志向してきたが、その動きは曲がり角に差し掛かっている。我々はグローバルに統合された、柔軟性とスピードを兼ね備えた、しなやかな組織に生まれ変わっていくことを求められているのである。

グローバルでの機能再編
こうした状況を踏まえ、この1年ほどでソニーは大きな改革を行ってきた。構造改革によりさらに筋肉質な体質に移行するとともに、大きな組織再編を行い、ビジネスの括りを大きくしたり、プラットフォームという呼ばれる事業横断組織を設置して合理化・効率化を促進したり、海外と日本の拠点の役割を見直してきたりしてきている。これらは一言で言うと、「競争優位性の再構築に向けたグローバルでの機能再編」である。その意味で、反撃の準備は整いつつあると言って良いだろう。

既視感と危機感
こうした動きに対して、「またか」「どうせまた揺り戻しがある」といった見方をする向きもあるだろう。もちろん組織には「右に揺れた振り子は左に戻る」といった性格があるのは事実だ。しかし、今回はこれまでとは経営陣の危機感がまったく違うレベルにある。

ソニーと比較されることの多いサムスン電子の09年12月期の売上高は、136兆2,900億ウォン(約10兆6千億円)と過去最高を記録、営業利益も10兆9,200億ウォン(約8,500億円)となった。ソニーが過去最高の売上高を叩き出した2007年度でさえ、売上高で8兆8,714億円、営業利益で3,745億円であることを考えると、彼我の差は大きいと言わざるを得ない。そうした競合からマーケットの主導権を取り戻していくためには、我々自身がまったく新しい会社に生まれ変わらなければならない。その大きな柱が、グローバル化に向けた変革なのである。

これは中央集権と地方分権といったレベルの議論ではなく、グローバルに統合され、柔軟に変化し続ける企業に向けた質的な変革である。これを実現していくための鍵が「人材」なのである。次回のコラムではソニーがどのような考えでグローバルでの人材活用に取り組んでいるか述べてみたい。


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