グローバル人財 Vol.1-人としての成長とそのサイクル化-2010年9月2日

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中村 喜一郎
経営・人財コンサルタント
神戸学院大学客員教授


P&Gの研究開発本部で、日本、アジア、世界市場向けのヘアケア製品の開発、ベルギーに赴任し、ヨーロッパ、アジア、ラテンアメリカ向けの柔軟仕上げ剤の処方開発を牽引。 その後、人事統括本部に異動し、約500人、18の出身国からなる神戸テクニカルセンターの組織改革、人材育成を推進。 その他、社内の日本人で初めて父親による育児休業を取得し、その経験を朝日新聞で「育休父さんの成長日誌」として連載、出版(共著)。2008年、独立。 多様性を駆使した、世界に通用する製品・人財・組織開発のコンサルティングおよび講師・講演活動を、産学官民、日本語・英語、大・中小企業と幅広く行う。 大阪府立大学大学院工学研究科博士前期課程化学工学専攻修了(工学修士)


◇ はじめに
現在、世界の人口約68億人に対し、日本の人口は約1億2700万人。 2050年には世界の人口は90億人を超え、日本の人口は1億人を割るとも予測されています。 ICTの進歩とも相まって、今後日本人が世界の人たちと協働する機会はますます増え、ビジネスのグローバル化を進める企業にとって、グローバルに通用する人財の育成は最重要課題の一つになっています。

◇ グローバル人財とその要件
「グローバル人財とは?」という問いに私なりに1行で回答を試みると、「グローバルな舞台で、多様性に富んだメンバーと効果的に協働し、最大限の成果を上げる人」となります。 そして、その「グローバル人財」が身につけるべき要件としては、次の3つのことが挙げられます。

1) 土台となる専門性
2) 基本的資質
3) グローバル・マインド&スキル


1)の土台となる専門性は、世界に通用する技術力や職務能力の事です。通常職場での実務を通じて鍛えたり、トレーニング、学習によって専門技能の習得をしたりして、身につけていきます。 2)の基本的資質は、前向きな考え方や積極性、変化対応力などで、一般に後天的に鍛えるのが難しいといわれています。 ですから、企業では面接やインターンを通じて、入社前にこの部分を見極めようとします。 3)のグローバル・マインド&スキルは、もっとも鍛えがいがあり、伸びが期待できる分野です。 私自身、前職のP&Gでたくさんの気づきや学びがあり(マインド)、行動を通して身につける(スキル)機会がありました。 特に重要なものとして、以下の5つがあげられます。

1) 人としての成長
2) 個人によるリーダーシップ
3) コミュニケーション&影響力
4) ダイバーシティ
5) チェンジ&トランジション


これから順番に、わたしが体得してきたマインド&スキルをご紹介します。 1回目は、人としての成長についてです。

グローバル人財として、そして成果を最大化するグローバル・チームにとって、もっとも大切なマインド&スキルは何でしょう? と聞かれたら、依存から自立そして相互協力という、人としての成長とそのサイクル化だというのが、私の答えです。

◇ 依存から自立へ
人は誰でもまずは、依存状態からスタートします。 生まれたての赤ちゃんや小さい子供というのは、誰かの助けなしには生きていけません。 そして、親や周りからの教えや自らの経験を通じて自立していきます。 新入社員も同じで、最初はわからないことばかりで、先輩や上司に教えてもらいながら、少しずつ出来ることが増えていきます。 が、自分が思う自立と上司が考える自立には隔たりがあったりします。 新入社員のころ、私が上司にわからないことを聞くと、「(プロジェクトを任されている)君がわからないことは、僕にもわからない」と、よく突き返されました。 私は主体的に質問を投げかけているつもりだったのですが、上司から見ると「考えが足りない」わけです。 また別の時には、世界の競合の動向をレポートにまとめ、自分的にはいい仕事をしたと思っていたのに、上司の同僚から「これはまだ道半分だ。 学びが試作品に活用されていない」と、本来私の仕事ではないと思っていたことに対してフィードバックを受けました。 私は上司に抗議をしましたが、「すべてのフィードバックはギフトと考えてみたらどうだろう。 これを機会として捉えることはできないかな」と返され、逆に奮起し試作品作りにも取り組み、それが後に世界を席巻する製品開発へとつながって行ったこともあります。 自立というのは、自ら考え、行動し、その結果責任を負う事はもちろん、期待をどんどんと超えていくことだと学びました。 

◇ 自立から相互協力へ
しかし、自立していわゆる腕自慢になると、周りから認められ、信頼されるようになるのが心地よく、そこに居座ってしまいそうになります。 ともすれば、自己中心的になってしまい、他の人の「依存」がやたらと目につき、例えば、自分がいないとものが進まないことを、腕自慢の勲章のように勘違いしだすと要注意です。 そのことにより、結局顧客へのサービスが滞ったり、消費者に優れた製品をお届けするのが遅れたりするのですから。 ベルギー赴任中、この落とし穴にはまった部下の一人に、自立をGo-getter(やり手)、相互協力をGo-giver(与え手)と説明し、彼がより効果効率的に最終目標に近づくには、やり手ひとりでは限界があることを知り、次のやり手を創る与え手へと成長することが大事だと伝えました。 そうすると、彼から学び新たにやり手となった人たちは、昔やり手として鳴らした彼が与え手へと変身していく姿を見て、今度は自分たちが与え手になる番だと動機づけを得る、という好循環が起こりました。 相互協力のステージでは、それぞれの分野での「自立」した腕自慢が集い、互いを認め合ったうえで相乗効果を発揮し、1+1を3にも4にも、時には10にも100にもできるというのが、私のグローバル・チームでの実感です。 

◇ 人の成長のサイクル化
相互協力は確かに素晴らしいものですが、恒久的ではありません。 異動をすれば、当然、また依存から始める部分が出てきます。 この時に、「前職では・・・」と前職自慢に走ったり、「まだ新しいので・・・」といつまでも出来ないまたは知らない言い訳を考えている時は注意が必要です。 依存は決して恥ではなく、「無知の知」を自覚し、教えを請い、また自立そして相互協力を目指せばいいだけのことです。 私は新しい仕事につく時は、「90 Days Rule」をよく用いました。 これは、最初の90日間をかけて、しっかりと学び、その学びをこれまで培った経験や専門性と融合させて、次の戦略や方向性に落とし込む、というものです。 例えばベルギーに赴任した時は、製品のパフォーマンスとコストの方程式を見直し、「Better & Cheaper」という新しい方程式を掲げ、そこに至るプロセスを見える化しました。 仕事が変わらない場合でも、外部環境が変わったり、上司やメンバーが変わることはよくあることでしょう。 どんな環境でも現状にチャレンジし、常に学び行動し、その成果やプロセスを周りと共有して、個人と組織の不断の成長を目指していただきたいと思います。

次回はリーダーシップについて考えてみます。 
Vol.2へ続く

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