組織変革(4)-タイムマネジメント-2010年7月30日

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松井 恭士
グローバルマネジメント研究所 
ディレクター


一日は限られた24時間。その時間は世界中の誰にも平等に与えられた貴重な資源です。しかし、その時間がすべて自分で自由に使えるかというと、それはなかなか難しいものがあります。自分の時間でありながら、他の人も関わればその人の時間になることもあり、自由にコントロールすることは容易ではありません。では、時間とは、いったい何でしょうか?

ギリシャ語で「時間」を意味する言葉としてクロノスがあります。このクロノスは物理学的に「絶対的時間」ということで誰が測っても1時間は1時間となります。ところが、ギリシャ語にはもう一つ時間をあらわす言葉のカイノスがあるそうで、カイノスはクロノスとは異なり、個々人が持っている「質的時間」を意味し、同じ1時間でも人によってその長さが異なってきます。「質的時間」のカイノスは人間が年をとるに従ってどんどん短くなってくるのが特徴で、子供の頃のカイノス時間1年と大人のカイノス時間1年を比べると、大人のカイノス時間1年は、はるかに短いものとなります。

時間をこのクロノス時間、カイノス時間に分けて捉えることも出来ますが、時間そのものを実際に目で確認することは不可能です。世界的ベストセラーといわれるStephen R. Covey著の『7つの習慣(The Seven Habits)』では、“時間とは出来事の連続体である”と定義し、その出来事を「重要軸」と「緊急軸」の二つの軸で捉え、次の4つに分類しています。

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第Ⅰ領域:重要で緊急
第Ⅱ領域:重要であるが緊急でない
第Ⅲ領域:重要ではないが緊急
第Ⅳ領域:重要でも緊急でもない

さて、皆さんは日頃どの領域に時間を使っていますか?“重要で緊急”の第I領域、あるいは第Ⅲ領域の“重要ではないが緊急”でしょうか?

職場では現場に近ければ近いほど第Ⅰ領域の方が多いそうです。なかには第Ⅲ領域に多くの時間を取られている方もいらっしゃるのではないでしょうか。ⅠとⅢが共通しているのは、緊急ということ、つまり、待ったなし!です。この中で過ごしていると、ある種の達成感は味わえますが、緊急中毒に冒され、常に飛び回ってストレスは溜まり、肉体も疲れ果てます。そしてⅠとⅢの仕事が終わると、何処に向かいますか? そこはⅣではありませんか?我が家に帰り、シャワーを浴び、食事を摂りながらお酒を飲み・・・、その後はベットでZzz Zzz・・・やがて陽が昇り、“よーぉし、今日も頑張るぞ!”と気分は元気になったかのよう・・・・。再び会社へ出掛け、終日IやⅢの仕事をし、そして夜は・・・・。こんな日を繰り返している方はいらっしゃいませんか?

しかし、本当にやるべきことは“重要であるが緊急でないこと“、第Ⅱ領域です。

歯が痛くてどうしようもなくなった時はⅠです。我慢できなくて辛いです。さらに、治療にも時間や費用がかかり、良いこと無し、です。逆にⅡの領域で定期的に検診さえしておけばこんな羽目にはなりません。同じように、仕事の殆どは、本当は最初第Ⅱ領域にあります。しかし、納期までまだ時間があるからと思っているとその仕事は徐々にⅠへと移動し、気が付いた時には・・・・。その他にもⅡの活動はたくさんあります。設備機械のメンテナンス、事前チェックもⅡです。さらに自分の技術や知識を身につけるのもⅡ、お客様へのサービス、日頃からの人間関係つくり、部下育成も、すべてⅡの活動です。

第Ⅱ領域の活動は心の安定をもたらしてくれます。そして何よりも、ⅡはIの予防・予知が出来ます。するとⅠの“重要かつ緊急”は次第に減ってきます。Ⅱが大事なのは誰もが知っているのですが、時間が無いから、さらにそれは緊急性を帯びてないから、解っていてもやらない、やれないのです。

では、Ⅱをやるための時間を何処からもってきたらいいのでしょうか?それはⅢからです。Ⅲの活動にNo(ノー)!と言うのです。でも人間関係が関わっていて、他の人からの期待もあるから、No!なんて言ったらその人との関係を壊しかねない、という思いがあり、とても難しいです。ですから、このⅢの出来事を主体的にマネジメントし、コントロールすることが必要です。そうでないと逆に出来事にコントロールされてしまいます。

コントロールの鍵は1月のコラムでご紹介した「ミッション」です。ミッションは自分の大切なもの、自分にとって重要な判断基準、モノサシになってくれます。それに照らし合わせ、ミッション達成に意義の無い仕事や出来事なら、主体性を発揮してNo!と、言うことです。第Ⅱ領域はミッションを実現へと導く、効果的な活動領域であると言えます。

さて、皆さんのスケジュール表に書かれている仕事はどうでしょうか?IやⅢが多いのでしょうか?
もしそうであるなら、先々襲ってきそうなIを想定して、今は緊急ではないけれど前もってやっておいた方が良いと思うことを、一つで良いのでスケジュールに加えてみては如何ですか?次のようなスパイラルに陥らないためにも。

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ドイツの詩人であり小説家、劇作家でもあったゲーテが言っています。「大事を小事の犠牲にしてはならない。」と。


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