グローバル人材の育て方 Vol. 3 – 2009年11月26日

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福住俊男
グローバルマネジメント研究所 
代表取締役


「Vol.3はVol.1及びVo.2の続きとなります。Vol.1からお読みください。」

前々回のコラムにも書きましたが、私はグローバル企業の経営者に求められる能力として次の能力要件が必要であると考えています。

* 人間力
  - グローバル視点の思考力・発想力・創造力
  - 自分のアイデンティティとなる価値判断基準
  - リーダーシップ力 
  - グローバルなコミュニケーション力
  - 決断力・実行力
  - 人間育成力
  - グローバルに人を公平に扱う力
  - グローバル・ビジネスへの情熱・熱意

* 経営力・管理力
  - マーケティング、販売、生産、経理・財務、人事などの経営機能別知識
  - ビジョン・戦略策定・業務改革・PDCAサイクルの回し方などの各種経営方法論
  - 人を育て動かすための人材マネジメント力
  - 優れたチームを作るためのチーム・マネジメント力
* 専門分野の能力 
  - 業界知識、経営機能別知識経験、技術、製品・サービス、人事・組織、ナレッジ管理、IT、経営・管理

* イノベーション力
  - 新規事業企画、業務改革
* 個人的資源(時間を守る、アグレッシブな姿勢、仕事への情熱、コミットメントの高さ、コスト意識など)

* 異文化対応力
* 語学力


このうち前回・前々回と、グローバルに通用するビジネス・パーソンになるために特に必要な能力として、人間力のうち赤色でボールドした5つの項目について、解説をしてきました。

経営力・管理力、専門分野の能力、異文化対応力、語学力については研修などの機会を通じて勉強をし、知識を吸収し、経験を積むことによってそれなりに身につくと思います。しかし、人間力にある8項目やイノベーション力、個人的資質については単なるスキルではなく、個人の志、想いや心がけによるところが大きく研修に出たからといって、うまくできるようになるとは限りません。

今回はどのようにしたらこうした志、想い、心がけを持ったビジネス・パーソンが育成できるかについて考えて見たいと思います。

グローバル人材育成として様々な企業研修がありますが、人間力のほとんどの能力は家庭教育や小中高の学校教育によって決まってしまうように思います。 企業研修のタイミングでは遅すぎて限界があります。 よく言われるように日本は島国であり、農耕民族であることから、グローバルに多様な人間が入り混じった環境は少なく、グローバルな視点で物事を考える訓練や、自らの価値観を、多様性の高い社会でもまれながら確立する機会に乏しく、公平さの概念も日本人だけの村社会の中での公平さを考えがちです。また最近大学を出てくる人たちは海外への転勤も嫌がり、グローバル・ビジネスへの情熱や熱意が欠けている人が多いとよく聞きます。

日本において教育を受け、日本の大学を卒業することは、グローバル人材になる素養を磨くという点では、圧倒的なハンディを背負っていると言わざるを得ません。企業に入社する前から、グローバル人材としてほとんどの日本人はスタートからつまずいてしまうことになります。

こうした現状を踏まえて、日本の小中高の学校教育のあり方を変えていくのも、長い目で見れば大変重要なことですが、目先のグローバル化を迫られている日本企業にとって、そんな流暢なことを言ってはいられません。

日本企業として、この圧倒的ハンディをしょって入社してくる日本人社員を、少しでも早くグローバル人材に育て上げるために、次のようなことを人事の仕組みとして導入されることを提言したいと思います。

1. まずはグローバル人材になれそうな素質を持った人を極力選んで採用する。
2. 外国人留学生も採用し、新入社員の時から、多様性に富んだ環境を作る。
3. 徹底的に論理的に考え、話し、聞き、回りを巻き込むコミュニケーション力を日本語でも英語でもできるように研修を行う。
4. 入社後1,2年後には研修目的で海外に赴任をさせて、グローバル人材として自らを見つめなおす機会を作る。
5. 社内の人事制度を改定し、入社した国にかかわらずグローバルに通用する人材として育てるグローバルキャリアと、入社した国でのみ活躍するドメスティックキャリアを作り、入社後4、5年目にはどちらのキャリアを歩むか決める。
6. 海外拠点に入った人のうち、グローバルキャリアを歩む人の中から、多くの社員を日本に呼び、日本人と一緒に仕事をする環境を体験させる。
7. 国内外を問わず、海外拠点に入ったグローバルキャリアの人と日本人をグローバルな土俵で競争させる。さまざまなコミッティーやプロジェクトで競わせる。
8. 人事評価やコーチングも日本人上司だけがするのではなく、さまざまな国の人から評価やコーチングを受けられるような環境を作る。
9. 評価項目の中に、人間力の8要素や、イノベーション力、個人的資質に関する能力要件を入れ、定期的に評価者やコーチからフィードバックをする。

グローバルキャリアとドメスティックキャリアを分けることはグローバル企業の本質からすれば、避けるべきだとは思いますが、ドメスティックなキャリアしか選択肢がない社員が多数在籍している以上、こうしたキャリアを分けることも必要であると思います。当然グローバルキャリアを選んだ人の中にも、上記のような環境で、十分力を発揮できない人も出てくるかもしれません。その時はドメスティックキャリアに変更するか、辞めてもらうしかないと思います。

日本人でも海外現法の社員でも、同じ土俵で勝負をしながら育てる、グローバルな人事の仕組み作りが、今必要なのではないでしょうか。

(終わり)



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ローダム三番町102

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