グローバル人材を考える – Vol. 2 – 2009年10月16日

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福住俊男
グローバルマネジメント研究所 
代表取締役


「Vol.2はVol.1の続きとなります。Vol.1を先にお読みください。」

グローバル人材の第4番目の要件、「グローバルに人を公平に扱う力」について考えてみましょう。

ほとんどのビジネスパーソンは、自分はすべての人に公平に接し、公平にコミュニケーションをして、公平に人を評価し、処遇していると思っているのではないでしょうか。「自分は人を不公平に扱っている」との自覚を持って人に接している人は少ないと思います。特に日本人の間では同一民族であり、日本語が話せることから、海外においては日本人に会うと親しみさえ感じて、話しかけてくる人も多くいます。グローバルにビジネスをする上で、こうした日本人が日本人に感じる親しみが、思わぬ不公平感を非日本人に与えていることがよくあるように思います。

例えば、日本語がわからない人がいる会議で日本語を使うのは、その人に対して情報格差を生むことになり、公平な扱いをしているとは言えません。本来であれば、常に全員が理解できる言葉で、同じ情報を共有しながら、話をすべきですが、その場でいちいち丁寧に英語に訳すことができなくても、簡単なサマリーをするなどして、できる限り情報格差を生まないようにすべきでしょう。

また、海外の現地採用の社員は、所詮手足として採用しているから、経営情報などいちいち共有しなくていい、と考えている日本人駐在員も多くいます。確かに20年、30年前であれば、こうした考え方が通用する会社もあったでしょうが、現在のように、発展途上国にも十分に経営や管理ができる素質を持った人材が育ちつつあり、また日本人駐在員以上に優れた人材も珍しくない時代に、こうした態度で現地の社員に接すれば、間違いなく優秀な人材から辞めていく会社になってしまいます。日本企業において、現地化や自立化の必要性が叫ばれて久しいですが、まだまだこうした任せられる人材が育っていないと嘆く駐在員も多く、その原因を先輩駐在員や自分たちが作ってきたのではないかと思われることがよくあります。

さらにいえば、本社の役員が日本人であり、日本語で日本人駐在員からの報告しか理解しないというのもグローバルに見れば、社員を公平に扱っているとはいえません。仕事を一緒にすれば、上司である日本人駐在員に不満を抱く現地社員が出てくるのは自然なことで、その不満を本社に伝える手段がないのは、現地社員からすれば、正当な主張を持っていく場所がなく、折角いい会社にする現場の声を吸い上げる手段を持っていないのと同じです。

優れたグローバル企業は全世界の社員の総力を挙げて、経営目標に合致した優れた仕事をする沢山のチームを国や拠点を超えて作っています。こうしたグローバルチーム活動をさまざまな国の社員を束ねながら行うことは難しいことではありますが、かなりの数の欧米のグローバル企業がそれをやれている以上、日本企業にそれができないはずはないと思います。日ごろはあまり意識していない事かもしれませんが、もうすでに現地採用社員と本社採用社員を区別するような不公平感を見直さなければならない時期に来ているのではないでしょうか。

次に、グローバル人材の最後の要件である「グローバル・ビジネスへの情熱・熱意」について考えてみましょう。

日本がバブル時代には、多く日本企業が海外に進出し、海外に出てインターナショナルなビジネスパーソンとして活躍したいと考えていた人も多くいたと思います。しかし日本がバブルに酔っていた80年代と現在とでは、グローバルな仕事に対する日本人全体の情熱や熱意の総量に大きな違いがあるように思います。

一つ目は絶対的数の減少です。そもそも大卒の新入社員の数が減っている上に、日本人駐在員の数を減らそうと考えている企業も多いことから、海外に派遣される日本人ビジネスパーソンの数はかなり減っていると思います。海外にある日本人学校などが閉鎖を余儀なくされることを見てもこの傾向は明らかでしょう。

二つ目に、中国、インド、韓国などのグローバル人材との比較において、日本人のビジネスパーソンは実に目立たない存在になりつつあるという事実です。

例えばアメリカのスタンフォード大学の学生の4割以上がアジア系ですが、日本人の割合は数%であり、圧倒的に中国人やインド人さらに韓国人の後塵を拝しています。またこうした国々からは私費での留学生がかなりの数に登るのに対して、日本人留学生はそのほとんどが企業派遣であり、卒業後は派遣企業の社員として日本に戻ってしまいます。中国やインドの留学生は地元でベンチャー・キャピタルなどの支援を得ながら起業をしたり、あるいはベンチャー企業に勤めたりして、卒業後も5、6年を現地で過ごし、ビジネスの経験をしてからグローバルに活躍することを前提に国許に帰り、自国の代表的ビジネスパーソンや政府高官になっていきます。日本企業の人事の方に聞くと、最近の若手社員は海外赴任を嫌がる人も多いようで、世界的に見るとなぜか日本全体が縮んでいくような感じがしてなりません。

60年代の本田宗一郎や盛田昭夫のような、世界を舞台に活躍することは当たり前と考え、自分の夢の実現に熱くなって動き回るビジネスパーソンはもはや出てこないのでしょうか。もしこうしたグローバルに情熱・熱意を持った日本人ビジネスパーソンが減ってしまうなら、日本経済の先行きはかなり暗いと思います。

スポーツの世界では、野茂やイチローや松井のような選手もいるのですから、すべての日本人がグローバルな情熱や熱意を失ってしまったわけではないと思います。これからのグローバル競争に打ち勝つためには100万人ぐらいの熱い思いを持ったグローバルに活躍できる日本人が必要だと思います。

グローバル人材の要件について私見を述べてきましたが、こうした人間を社会人になってからそれぞれの企業が独自に育成するのも変な話で、そもそも小学生から大学を出るまでの学校教育の過程で、様々な多様性に富んだ人間からなるチームの中で揉まれながら、自然とグローバルな多様性を身につける環境作りが求められているのではないでしょうか?

次回はグローバル人材をどのように育てるかについて書きたいと思います。


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