智摩莱商務諮詢(上海) 有限公司 (GML上海)
総経理
最近、私の仕事の中で「人事領域」の仕事の割合が増えています。
中国人社員のモチベーションアップしかり、そのための改善アクションプラン策定、人事制度改定しかり。
私は元々、人事屋ではないため、経営者の視点から中国での会社組織の人事制度・人事の仕組みを見たり考えたりする訳ですが、”人事のプロ”が作る人事制度には、これまでなんとなく違和感を感じていました。
人事のプロに「人事制度はかくあるべき」と言われると、確かにもっともらしく聞こえるのですが、本当にそれは正しいのか(適切なのか)、なんとなくキレイな仕組みが出来上がってはいるけど、魂(ソウル)がそこに入っているのか、そんな疑問がずっと頭にありました。
・これまで属人的、付け焼き刃的に給与・ボーナス、役職を決めてきたので、人事制度の仕組みを作らないとそろそろまずい。
・現行の人事制度を変更しないと数年後に人件費が上がり過ぎて会社が回らなくなるので、特に役職の高い人、勤務年数の長い人の給与上昇率を抑える人事制度に変更した。
私も経営者の1人なので、そういった経営サイドの本音は理解できるのですが、本当にそういうことを優先して人事制度構築を作るべきなのだろうか、中国人社員のやる気を奮い立たせるということをもっと前面に出した仕組みを作るべきではないのか…という素朴な違和感を持っていました。
2年前までは、この自分の頭の中の違和感が正しいのかどうか、あまり自信がなかったのですが、最近、中国で色々人事領域の仕事に関わり、色々な人に話を聞く中で、段々分かってきました。(こんなことを書くと怒られるかもしれませんが)人事のプロよりも、(経営者視点の)私の見方の方が(特に中国では)的を得ている可能性が高いということを。
(私の知る限り)中国の日系企業では人事のプロが好きそうな100満点の会社の理想像を仕組みに落とした人事制度を構築しているケースが多いと思います。
しかし、そんな100点満点の人事制度を30点の実力しかない組織に導入しても50点の組織も作れないと思うのです。本社は数万人以上の社員を抱える大企業だとしても、中国現地法人は数百人規模の中小企業が多いと思います。まだロールモデルとなるべき中国人幹部社員がそれほどいない中小企業は、キレイな仕組みで回すよりも、その少数の幹部社員のタイプ、性格、強みを最大限に活用できるように「人に合わせて仕組みを作る」という方が(少なくとも、直近は)最適なのではないかと思うのです。
私は中国ビジネスにおいて、人事にもマーケティングにも何にでも使える、成功のためのキーワードの1つに「自然とそうなる仕組みを作る」というものがあります。
中国人社員、中国人消費者、中国取引先を無理やりこちらの思い通りに動かそうとするのではなく、ルールをうまく設計することで、多くの中国人ステイクホルダーが自らの利益に基いて判断し、こちらの思い通りの方向へ自然と動いてくれるような仕組みをいかに作るかが重要、ということです。
「自然とそうなる仕組み」の主人公はあくまでも中国人です。
日本人にとって分かりやすい仕組みではなく、中国人にとって分かりやすい仕組み・ルールにする必要があります。また日本人が「これをやりなさい」と指示をするのではなく、いくつかの選択肢を提供するだけにとどめて、あとは中国人自身に自分の意思で(できればこちらの意図する選択肢を)選んでもらって実行してもらう雰囲気を作る必要があるのです。
また自然とそうなる仕組みのルールには、「主観的な判断」が伴うものを入れてはいけません。定量的な指標を用い、誰から見ても解釈が同じになるように客観的なルールにする必要もあります。客観性を担保するために「完璧さ」を求めてはいけないのです。
この「自然とそうなる仕組み」の設計は、確かに難しい。でも本気で中国で結果を出したいなら、ここから逃げてはいけないと思うのです。ここで逃げずに、中国人社員(消費者、取引先)に向き合い、懐に入って信頼関係を継続しながらも、本音でぶつかり合う。そういうプロセスなくして「自然とそうなる仕組み」は出来上がりません。
このようなかなり手間のかかる「自然とそうなる仕組み」を作る場合にはいくつかコツがあると思います。
1つ目は「できるだけシンプルな仕組みにする」ということです。ルール・仕組みが複雑になればなるほど中国人に理解されず、そのルール・仕組みが正しく機能しているか、していないのか分かりません。仕組みが50点のまま動き続けるよりは、0点だと早めに分かり作り直して
70点を目指す方がベターです。
2つ目は「中国人社員全員をターゲットにしない」ということです。もちろん、社員の大多数が自然と適切に仕事をしくれて、自然と結果が出る仕組みがベストだと思いますが、日系企業(現地法人)の多くは、それを一気に達成できるほど実力がないという事実を認めるべきだと思います。だからこそまずは、社内に少ししかいないSランク、Aランクの社員に、気持ち良くはたらいてもらうこと、実力を出し切ってもらうことにフォーカスすべきです。Sランク、Aランクの社員がそういう状況になればBランクの社員の一部は自然にAランクに社員のように働いてくれるようになります。
そうはならないBランク、Cランクの人は無視すればいいのです(逆にそこを捨てないと
Sランク、Aランクの社員が満足しない仕組みになってしまいます)。
3つ目は「仕組みは随時変更するものだと考える」ということです。例えば人事制度を構築するとなると、結構費用もかかるので、5年、10年は持つ仕組みを作ろうと考えがちだと思います。そうなると5年、10年後に組織が成長したときにも有効に使える100点満点の仕組みを作ることに逆になってしまい、今の30点の組織が、まず50点を目指すために有効な仕組みではなくなってしまうのです。
現在の自社の人材力、組織力を見極めた上で、まずは今の中国人社員、中国人組織の実力を20%〜50%引き上げることにフォーカスすべきだと個人的には思います。そして実力が20%〜50%上がったら、今度は更に20%〜50%上げるための仕組みを作り直せばいいのです。例え、仕組みを作ってから1年しか経っていなくても、環境や自社の実力が代わったら、仕組みは作り直すべきです。そのためにも最初から完璧なものを作ろうとせずに、適宜作り直すことを前提に(トライ&エラー)を前提に仕組みづくりをスタートすべきなのです。
今回かかせて頂いたことは、私自身が今本当に思い、本気で取り組みたいと考えていること
でもあります。もし同じような問題意識を持ち、真剣にそこに取り組みたいと考えている方が
いらしたら、ぜひご連絡頂ければと思います。無償・有償など色々な形でコラボ・支援させて頂ければと思います(笑)。
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