智摩莱商務諮詢(上海) 有限公司 (GML上海)
総経理
「誰が何を売っても必ず儲かる中国小売チェーンビジネス」
店鋪で売る商品がどんなものでも、店頭の販売スタッフがどんなに素人でも、必ず儲かる中国の小売ビジネスについて今回書こうと思います。
通常、B2Cビジネスでは「消費者を囲っているプレイヤー」が商流上他のプレイヤーより優位に立ちます。中国だと集客力があった一昔前の百貨店しかり、現在のTmallしかり。消費者の吸引力があるプレイヤーが胴元としてトップに君臨し、自分が囲っている消費者をどの店鋪に送り込むか、どの商品を買わせるかを決める権限を事実上持つからです(※どの店鋪でどの商品を買うかを決めるのは、もちろん消費者自身ですが、消費者の目に映る機会をどの店鋪、どの商品に依怙贔屓するか決めるルールを胴元が自由に設定することできるからです)。
また胴元は集客力を盾に、しもべである店鋪や商品メーカーに身を削らせて値引きセール等を繰り返し強要することで、
胴元自身の集客力を更に高めると同時に自らの収益と交渉力を高め、益々優位な地位を築きます。そして反対に売上や集客が期待できなくなった店鋪や商品(メーカー)をバサッと切り捨てるのです。
このような、ある意味極悪非道なビジネスモデルこそが、中国B2Cビジネス勝つための勝利の方程式になっているのが現状です。
中国のドラックストアチェーンのワトソンズ(屈臣氏)も、そんな(ある意味)極悪非道のビジネスを展開しています。詳細は富井さんのコラムや研究会での解説に譲りますが、私が最も「ワトソンズ恐るべし」と思うのは、ワトソンズで販売される商品はいつでも返品可能な委託販売にも関わらず、棚に商品を並べただけで前台毛利と呼ばれる10%もの手数料を取ることです。「売れても、売れなくても」です。これはもう小売業ではなく不動産ビジネスですね。
こんな不動産型小売ビジネスで収益を上げているワトソンズですが、注目すべきは、それだけではありません。本当にワトソンズが優れているのは、1500店鋪を「中国で」運営するノウハウです(個人的には、こちらこそ日系企業が参考にすべきだと思います)。ワトソンズは、基本的に中央集権で運営されています。商品の棚割りから、商品ごとの値引率に至るまで、全て本部の指示で3週間単位にコントロールされています。司令塔である本部が出した指示を、店鋪側は余計な頭を使わずにひたすら実行するというオペレーションモデルです。もちろん、本部が各店舗を巡回するスーパーバイザーを
派遣して、店鋪が言われた通りにしっかり実行しているか監視する体制も整えています。
店頭販促も本社主導です。店鋪では商品の陳列場所やPOPなど商品売上を左右する様々な販促手段がありますが、商品メーカーや店鋪に、その個別最適を考える自由度は与えません。ワトソンズの店頭販促はA、B、Cなどセットメニューしかないのです。一番高いAコースを選んだら、一番いい棚で販売できるだけなく、会員向け雑誌のよいページで宣伝され、POPでも目立つようにしてくれるというセットメニューです。
各店鋪が細かいレベルのオペレーションを行う実力がないので、本部がガチガチに固めた販促メニューしかやらないという、ホームランははじめから狙わずに安定して3割ヒッターを目指すという潔い割り切り。この何かを狙うためには何かを思い切ってバサッと捨てるという戦略志向は、なかなか日系企業がまねをできないところだと思います。そんな頭脳として
の役割は全く期待されていない店長には、必要最低限の情報しか公開されていません。自店鋪の商品別販売個数は調べれば分かると思いますが、他店鋪やワトソンズ中国全店鋪で何がどれくらい売れたのかという情報は、店長は知ることはできません。店長は、そんなことを考えなくていいからです。商品が売れようが売れなかろうが儲かる不動産ビジネスなのですから。
※当コラムは、弊社が毎週火曜日に発行する有料メルマガ「心理学とロジックで勝つ中国ビジネス」(50元/月(800円/月))の過去コラムの一つです。
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