グローバルマネジメント研究所ベトナム
代表
ベトナム人は日本人と合う？
ベトナム人というと、「若くて元気な労働者が多い」「素直でまじめ」「情に厚く、日本人と相性が良い」と日本では刷り込ま れているケースが多いように思います。しかしながら、当地進出日系企業の悩みの種といえば、１にインフラの未整備、２に煩雑な行政手続き、３に人材、とい われるように人材で頭を悩ませているのが現実です。個々人単位で見ると良い人も多いのですが、中国人とも違うしタイ人とも違う、と単に言葉が通じないだけ ではない扱いにくさがあります。
喧伝されるベトナム人材の裏の顔を見る
–「若い」＝「未成熟」
平均年齢２８歳のベトナム人は日本社会に比べれば確かに若いです。一方で平均年齢が若いということは、社会の未成熟さも意 味します。何分第３次インドシナ戦争が終わったのが１９７９年ですから、平和な時代を迎えてわずか３０年余しかたっていません。一般的な社会常識ともいえ る、トイレの使い方やゴミはゴミ箱に捨てる、列に並ぶといったことは一般にはできません。また、教育もまだまだ不十分ですので、±３というような数字の表 し方は理解できなかったりしますし、文章をかかせると脈絡がなく支離滅裂、話をさせると何を言いたいのかよくわからない、というようなレベルです。全般に 精神年齢も若く、実年齢から５歳から１０歳は精神年齢が若いと考えるべきでしょう。３０代でも携帯遊びに余念がなく、毎日着信音を変えている、２０代のパ ソコンの背景画面はアニメのキャラクターといった具合です。ある工場の社長は「幼稚園生を１０００人雇って生産しているようなものだ」と評していました。 従って、子供じみた言い訳や暴言、身勝手な振る舞いなど良く見られます。ベトナムに赴任して間もない人は皆驚かれますが、これが現実です。この現実から教 育がスタートすると考えてください。
–「素直でまじめ」＝「言われたことしかしない、できない」
確かに特に女性は生真面目に働きますし、「夜間シフトでも目だってさぼっている子がいない」と評する工場の社長もいます。 いわば、言われたことには忠実に従おうとするのがベトナム人気質の一つとも言えます。一方、徐々に生産も安定してそろそろ５Sなど自主活動を導入しようと すると、はたととまってしまうのもベトナム人気質です。そもそもベトナム人社会では上位の人の命令に忠実に従うのが良い部下で、意見をしたり質問をしたり することははばかれます。従って、アイデアを出しなさい、自分で発想してみなさい、といわれると困惑してしまうのが一般的です。詰め込み型の記憶教育が中 心のベトナムでは発想力や応用力などを期待するのはまだまだこれからで、先を読む・他との関連や影響を考える・相手がどう受け止めるかを慮る、といったこ とは相当高い要求レベルとなります。まずは、自分の意見を言う、常に提案するという習慣を徐々に身に付けさせることからはじめましょう。未成熟なベトナム 人なので、はじめは短絡的、稚拙な提案ばかりですが辛抱強く取り組むことが必要です。
–「情に厚い」＝「家族だけ」
最初にベトナム人と接した日本人は、その愛想の良さにたちまちファンになります。確かにベトナム人は外国人、とりわけ敗戦 国でありながら先進国に上り詰めた日本へは高い尊敬の念を持っており、王様なみの扱いにのぼせてしまう日本人も少なくありません。しかしながら、ベトナム 人同士の関係は非常に厳しく、家族や親類以外には本音を明かせないというのが実態です。「ベトナム人は１人で落とし穴に落ちでも這い上がれるが、３人で落 ちると這い上がれない」と言われますが、他人の足の引っ張り合い、中傷や裏切りなどは日常茶飯事で、非常に緊張感のある人間関係です。従って、ベトナム人 同士の意思疎通やチームワークも非常に苦手で、ホウレンソウができないとよく言われるのもこの人間関係が背景にあると思われます。社会主義のベトナムでは 官公庁や国営企業が主流の就職先で、そこではかつての日本の役所と同様に、優秀かどうかより血筋の良し悪しがものを言います。そこで、競合の血縁関係の人 たちとは足の引っ張り合いで競争がなされます。一見仲の良さそうな従業員同士も個別に話をすると、相手の悪口ばかりを言ったり、突然仲間の従業員が辞めて も何もなかったかのように働く姿を見ると、日本人からはかなりの違和感を感じます。また、日本人も気をつけてください。「心の中に土足で入り込む」と良く 言われますが、仲がよくなればなるほど寄りかかってきて、いざ自分に都合が悪くなると罵詈雑言を浴びせられます。これもベトナム社会に迎えられたことの証 とも考えられますが、郷に入っては郷に従えです。信用はしても信頼はしない。ベトナム人が本気で気を許すのは家族だけです。