カオスな中国ビジネス界で成功するコツは?「変数」を意識して“始めから捨てる30点”を決めよ

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eguchi3
江口 征男
智摩莱商務諮詢(上海) 有限公司 (GML上海)
総経理


中国ビジネスは「カオス」です。物事が予定通り進まない、従業員や取引先など関係者に裏切られる、法律や規定が急に変わる……。これらは日常茶飯事です。

 なぜ中国ビジネスはカオスなのでしょうか。ビジネスのアウトプット(結果)を左右する「変数」に関して、3つのパラメーターに分けてみると分かりやすいと思います。

カオス度合=「変数の数」×「変数の振れ幅」×「変数が変わるスピード」

中国ビジネスの不確実性は、日本と比べて圧倒的に変数の種類が多く、変数の振れ幅も大きく、変数が変わるスピードも早いことに起因します。

 では、3つについて、詳しく説明していきましょう。


社会や組織よりも個人の主観が優先
1つ目のパラメーターである結果に影響を与える「変数の多さ」は、「中国人は社会や組織ではなく“個”でバラバラに動く』ことに起因します。日本であれば、「社会の常識」とか「会社としての利益」という錦の御旗を立てれば、その組織の構成員はたとえ個人の利益に反していたとしても組織を優先に動きます。

 日本人は「社会や組織の一員として恥じないように行動しないと村八分にされる」という概念が子どもの頃から刷り込まれているので、他人にどう思われているかを常に気にかけ、他人と違う行動はできるだけ避けるという習性があるからです。

 ゆえに、ビジネスを進める際も社会や組織単位で最大公約数や平均値さえ掴んでいれば、全体の動きもコントロールすることができるのです。

 しかし中国は違います。「社会や組織」の都合や利益よりも「個人」の都合や利益が優先されるので、「社会の常識はこうだから、それに合わせて行動すべきだ」という理屈は通用しません。しかも日本の25倍の国土、13倍の人口を持ち、地域が変われば言葉(上海語、広東語など)や習慣も異なります。その上、多民族国家である中国では、「自分は他人と違うのが当たり前」で他人のことを特段意識することなく各自の主観で行動します。

状況次第で大きく変わる日本の想定を超える“振れ幅”

2つ目のパラメーターの「変数の振れ幅」も、日本と比べてかなり大きいのが中国です。日本であれば、ある想定の範囲内で収まる変数が、人やタイミング、状況次第でプラスからマイナスまで大きく振れるのが中国なのです。

 中国でもよく「グレーゾーン」という言葉が使われます。例えば、法律に抵触しない範囲のギリギリのことをやった場合、政府機関の担当者の判断次第で、特に問題なしと判断されることがある一方で、違法行為なので多額の罰金を払えとなる場合もあります。また、政府の役人の中にも、あからさまに企業に賄賂を要求する人もいれば、逆にこちらが付け届けをして関係を深めたいと思っても、頑なに拒む精錬潔白な役人もいます。

 日系企業が中国企業の経営者と商談をしていて、最初は全く折り合わず険悪なムードだったにもかかわらず、日系企業の中国人スタッフと中国企業経営者が、実は同じ地方出身だったり、日系企業側の交渉責任者と中国人経営者が共にMBAを持っていたり、お互いの共通項が見つかると、急に距離が縮まって「今までの話は何だったのか」と思えるほど商談がまとまるケースもあります。

 中国人従業員もそうです。普段は特に可もなく不可もなく、上司から言われたことだけをある程度こなしているような従業員も、アメとムチを使い分けてうまくモチベートすることで見違えるほどの成果を出すこともあれば、逆に従業員の面子を潰すようなことをして、会社に敵対する行動を取り始めることもあるのです。

DNAとして備わる不確実性を乗り切る力

3つ目が「変数が変化するスピードの早さ」です。日本が40~50年かけて遂げてきた発展途上国から先進国への変化を、ビデオを飛ばしてDVD、ブラウン管を飛ばして薄型テレビ、固定電話を飛ばして携帯電話など10年程度で無理やり成し遂げてきた中国は、明日は今日とは違うのが当たり前なのです。

 日本では各変数が変わるのは年単位、早くても月単位だと思いますが、中国の場合は週単位、下手したら日単位で変わります。契約書で合意した内容も、後日状況が変われば自分の交渉力次第で変更することも当たり前だ、と本気で考えている中国人経営者も少なくありません。

明日は今日と同じ訳がない、今日の勝利の方程式が明日も通用するとは限らないことが前提の中国では、「安定」や「現状維持」に依拠することは負けを意味します。自分自身が変わらなくても、周りの環境が変わるので現状維持すらままならないからです。

 不確実性というリスクとともに生きている中国人は、「何もチャレンジしなくてもリスクがあるのであれば、機会があれば積極的に挑戦しない手はない」という考え方がDNAとして備わっているのです。日本でのビジネスのように、きちんと計画を立て、勝てる可能性がほぼ確実になった段階で事業を進めようと思っても、計画を立てきった段階で既にその前提条件が全て変わっていて計画はまったく意味がないという状況も多くあります。

30点ははじめから捨てる・居心地悪くても70点を目指せ

このように、振れ幅が大きくすぐに変わる変数がたくさんある中国で、全ての変数をコントロールして思い通りの結果を出すことは現実的に不可能です。そんな無秩序の中国でビジネスを行う方法は2つしかありません。

 1つは、「中国ビジネスは、コントロール不能だからどうしようもない(没方法)」と考え、世の中の流れと運に身をまかせながら生きていくという方法。一般的な中国人はこちらに属します。「中国はリスクが大きすぎるから、怖くてビジネスができない」と考える日本人経営者もこちらに入るでしょう。

 もう1つの方法は、「全ての変数をコントロールするのは難しいので、自分にとって優先順位の高い変数に絞り、何とか自分の思い通りの結果が出せるようにベストを尽くす」という方法です。これこそが、まさに成功している中国人経営者が取る方法です。信頼できる人を周りに増やし、信頼できる人との協業を増やすことで、不安定要素やコントロール変数を減らしていきます。そして、全ての条件が揃わなくても走り始め、環境が変化することを是として、それに対して俊敏に対応していく方法です。

 日本と同じように100点を狙いに行くと、コントロール不能に陥って、結果として20点、下手すれば0点しか取れないのがカオスな中国なのです。日本人的感覚だと少し居心地が悪いかもしれませんが、100点ではなく70点を目指す(30点をはじめから捨てる)この方法こそ、日系企業がカオスな中国市場で勝つために心がけるべき戦略だと思います。

あなたの会社の中国事業は、はじめから捨てる30点が明確になっていますか?

2013年7月9日
Diamond online掲載



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