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ベトナムは社会主義国ですよね

Kenji Hachiya
八谷 賢次
グローバルマネジメント研究所ベトナム
代表

ベトナムは社会主義国ですよね

「ベトナムは社会主義国ですよね。。。?」と素朴な疑問をいただくことがあります。ベトナムは正式国名をベトナム社 会主義共和国と言いますので、その名のとおり社会主義国です。丁度、ベトナムは憲法改正の議論の真っ只中で、議論の中にはホーチミンさんが独立宣言した際 の「ベトナム民主共和国」に戻すべきだ、との意見も噴出し、時宜に適う話題かと思います。
しかしながら、ご質問の意図は少々違うような。。。どこかの国と比べた政治体制や統治のあり方の違いを伺っているのだと思い、いつもこんな説明をしています。


ベトナムはやっぱり社会主義、でも某国とは相当異なります

–イデオロギーの議論はさておき、土地の所有などから見ればベトナムはやっぱり社会主義

昨今、社会主義国を標榜する国が国家資本主義と呼ばれたりと、いまや社会主義、民主主義、共産主義、資本主義など概念と実態がかなり混沌としていますので、社会主義を定義づけるのも難しいのですが。。。
社会主義国の一つの特徴が土地は全て国有財産である、という視点ではベトナムでは土地の私有は認められておらず、使用権が期間限定であるだけですので、社会主義国の要件に当てはまります。
また、共産党の一党独裁という視点でも、社会主義国と言えるでしょう(多党制を取るべきとの意見も憲法改正の中で出てきていますが)。
社会主義国にお決まりの言論・思想統制も一応あります。信仰の自由はありますが、政府や社会体制に対する批判などの言論は法律違反にもなります。
この点では、日本人の皆さんも、ベトナムは社会主義国だということをあらためて心に留め置き、過度な夜遊びには気をつけるのが得策です。


–とはいえ、某国とはやや様子が異なるような。。。

「ベトナムは社会主義国ですよね。。。」というようなご質問は、ある意味「某国と同じような統治体制が敷かれているのですよね。。。」ということを意図しているのかなと感じます。
その点では、同じ社会主義国とはいえ、ベトナムの政治の進め方はかなり人民よりだと感じます。
もとより、ホーチミンさんは、ベトナムが植民地化されていた際に、フランスの社会党やドイツの左翼からのサポートを受けて活動を進めていましたが、当時の 各国左翼グループが反植民地主義だったため、ホーチミンさんを支援をしてくれた。翻せば、社会主義か否かによらず反植民地主義陣営の国際世論をホーチミン さんも得たかったと考えられます。
また、ホーチミンさんが革命を思い当たった際に、当時の上流階級層を中心に据えるか、農民層を中心に据えるかで迷った際に、ロシアの10月革命を参考に、農民・労働者層を従えて蜂起したとされています。
(ホーチミン氏については大分はしょっています。ベトナムに居を構える日本人の皆さんには是非、ホーチミンさんの足跡は本等で確認してもらえればと思います)
こうした背景からか、ベトナムは社会主義国でありながら(というか本来社会主義はこうあるべきと思いますが)、かなり労働者や農民に優しい政策を取っているような気がします。
貧しい村の住人に旧正月時にはお年玉を配給したり(それを懐に入れる地方役人もいますが)、土地の収用も高圧的になることは少なく進めていたり(おかげ で、工事の遅延が当たり前のようにありますが)、警察が市民に暴力を働くことも少ない(賄賂を受け取らない警察官を、逆につかまったバイクの運転手が殴っ たり)といった感じです。
最近では政府首脳人の信任投票を始めたりとかなり民主化が進んでいるように感じます。
こうした点では、ベトナムが社会主義と言うだけで某国と同様と考えてしまうのは早計に思います。


–頭が痛いのは、どちらかというと官僚主義

「ベトナムは社会主義国ですよね。。。」という質問は、始終ベトナムで発生するトラブルが社会主義に端を発しているのでは、という疑問から来ているのかもしれません。
確かに、改正された通達は地方の担当者には伝わっていませんし、各担当者が自分の裁量で業務をこなすので、担当が変われば役所へ提出する書類も変わるなど、煩わしいことこの上ありません。
しかしながら、これら役所の手続きの煩わしさは、日本にもかつてあった、役人仕事の典型で官僚主義から来るものと思われます。
かつての日本と同様に、役所や国営企業への就職を希望する人たちは、一部の官僚候補を除いて、基本的には安定を求めている人たちです。いまだに縁故や賄賂採用が当たり前のお役所では、採用さえされれば給与は安くとも首になることのありえない安定職場です。
昇進試験や査定があるわけでもなく、上司に気に入られなければ昇進できない状況下では市民サービスに力が入るはずもなく、平日に上司の親戚の結婚式で所員が一斉にいなくなるなど、社会問題化もしています。
最近ではようやく一部の省で採用試験が始まるなど(えっ今頃!と思いますが)、政府の財政難も好を奏して、少しずつですが能力主義・実力主義の波が役所の中にも芽生えつつあります。
日本でも「お役所仕事」なんて言葉が聞かれなくなったのも最近のことのように思われますが、ベトナムでも早く、市民の公僕たる役人の姿に生まれ変わって欲しいものです。

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